2008年05月19日

主よ、あなたが歩かれる道ならば―マルコによる福音書(2008年5月21日放送)

第60回 このような者たちなのに

イエスは教えの中でこう言われた。「律法学者に気をつけなさい。彼らは、長い衣をまとって歩き回ることや、広場で挨拶されること、会堂では上席、宴会では上座に座ることを望み、また、やもめの家を食い物にし、見せかけの長い祈りをする。このような者たちは、人一倍厳しい裁きを受けることになる。」(マルコ福音書12章38〜40節)

自分が尊敬され、注目され、大事にされることを期待し求める、あるいは、そうされると嬉しいという気持ちを持つことは、人間ならばあり得ることかもしれません。

律法学者たちが自分からそういう評価を求めたのか、勝手に人が評価するのだけれども誉められて悪い気はしない、そういうことだったのかはわかりません。しかしイエス様はそのことをとても厳しく見咎めていらっしゃいます。「このような者たちは人一倍厳しい裁きを受ける。」そうおっしゃったのです。

律法学者は、ただ見せかけだけで生きていたというよりは、誰よりも律法に従う努力をしたのであります。しかしイエス様はその律法学者を咎められたのですね。イエス様は何をそれほど厳しくご指摘なさったんでしょうか。
律法学者たちは人々から尊敬を集め、一目置かれているのです。実はそのこと自体の中に、ある種の落とし穴があるとイエス様は見ていらっしゃるのではないかなと思いました。しかもそれはとても重大な落とし穴であります。つまり彼らが尊敬を集めているということ自体が、大きな裁きの対象であるということなんですね。

牧師に対しても、「あの先生は素晴らしい」と言う人があります。その牧師の言葉や振る舞い、生き方が賞賛の対象になっている。人の心を神様へと向けさせようとしていたはずなのに、気がつくと自分のほうを向いているということが起こる。それは、人々の目を神様から離す手引きをしてしまったことになりはしないか。人々の目が神様からそれてしまい、人間の力、業、功績を見るということになってしまう。それはまさに罪の力ではないでしょうか。

ここにイエス様の厳しいご指摘があるなと思いました。律法学者がどれほどに正しい道を志していても、そこに深く神様を悲しませていたということがあるのではないかと思います。

私たちも律法学者と同じように厳しい裁きの対象なのだと思わずにはおれません。

私たちの生涯は、人の心を神様に向かわせるような生き方をしているだろうか。あるいは自分の目がまっすぐに神様に向けられるような暮らしをしているだろうか。私たちは神様から命を、否、すべてを与えられて生きています。でもそれがいつの間にか当たり前になっていって、正しい道を志して生きていても、その姿を誉められたりしているうちに、あたかも自分の業ゆえに誉められている、そういう気持ちが大きくなって、神様への感謝を忘れてしまう。自分の力で生きているのだという思いが心の底で私たちをとらえるのです。

また、私たちは神様に祈りますが、祈るということは神様のまなざしの中で事をなし、生きていくということですね。祈りながら生きるということは、神様のまなざしの中に置かれている自分、そのことに常に心を留めながら生きていくということなんです。しかし、神様のまなざしが私たちの背後にあることを忘れてしまうのです。

イエス様は「このような者たちは人一倍厳しい裁きを受ける」とおっしゃいました。これは律法学者たちだけのことではなく、この私たち自身も含まれることなのです。私たちの罪の深さをイエス様はご覧になっているのです。

しかし忘れてならないことは、イエス様はこのことをお語りになりながら、既に十字架の道を見据えておられるということです。イエス様は、ご自分が十字架にかかるということを見据えながら、私たちの罪をご覧になって、「このような者たちは誰よりも厳しい裁きを受けなければならない」とおっしゃったのです。

それは、「この人たちが、裁きを受けねばならない罪に陥っている。それゆえに、わたしが、十字架の道を歩まねばならない。」そのようにイエス様が見定めておられるということではないでしょうか。

人一倍厳しい裁きを受ける裁きの座というものがあるとするならば、イエス様はその裁きの座をご自分の命で独り占めしてくださったのです。十字架において。もうそこに誰も立つことがないように、裁きの前に、ご自分の身を置いてくださったのです。あなた方がその人一倍厳しい裁きにさらされることがないようにと。主はそれを成してくださったのです。

主よ、あなたが歩かれる道ならば―マルコによる福音書」(2008年5月21日放送)
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